マッチレースの国際舞台に立って
----------2013/09/17〜21
文 / 市川航平
我々、「月光ボーイズチーム」は9月17日〜21日にシンガポールにて開催された「Asia Pacific Student Cup 2013」に参戦してきました。
この大会はアジアのユース選手をメインにアジアチャンピオンを決めるもので、我々日本チームの他に、シンガポール、マレーシア、タイ、中国、アイルランド、イタリア、オーストラリアの計8カ国から選手が集い、14チームもの参加になりました。
我々は、今年の3月に行われた大学対抗マッチから本格的にマッチレースを始めたメンバーが大半です。
ディンギーからキールボートへ舞台を変え、部活終了後も刺激的なヨットの世界に身を置いています。
マッチ歴は半年ほどと経験は浅いものの、今大会に参戦するにあたって国内のマッチレースの大会や練習を通して動作やコンビネーションの確認を進めていき、出るからには結果を求めようという気概で挑んできました。
大会で使用した艇種はSB20というバルブキールの3?4人乗りのボートで、我々日本チームは前方から、早稲田大学の加藤文弥(バウマン)、京都大学の荒川淳一(ミドル)、東京大学の中山遼平(トリマー)、早稲田大学の市川航平(ヘルムス)の4人の布陣。
予選のラウンドロビンでは、馴れない環境と高層ビルから吹き込む40°以上もの大きなシフト、そして何より艇の扱いに苦戦をしてしまい、思うようなマッチレースが出来ませんでした。
ラウンドロビンも終盤に差し掛かると、徐々に4人で思い通りに艇を動かせるようになっていき、自分たちの思い描くマッチレースの戦術に当てはめながら戦えるようになったものの、序盤に連敗を喫してしまっていた影響で、一時は次のステージに進めないかもという状況まで追い込まれてしまいました。
結局、日本とオーストラリア、そしてマレーシアの3ヶ国が同率8位、予選通過のリミットラインで並ぶものの、運良く両チームに直接対決で勝っていたのが幸いし、次のクォーターファイナルへと進出することができました。
クォーターファイナルでは、8位通過の僕らは1位で通過した地元シンガポールのナショナルチームメンバーとの対戦でしたが、予選ラウンドで苦戦しながら、時にはチームメイトと熱くぶつかリながらも、艇の扱いと戦術の組み立てを1つずつ改善してきた成果もあり、2勝1敗で相手を下し、セミファイナルへと駒を進めました。
その後も、予選2位通過のタイチームとのセミファイナル、そして昨年の優勝チームのシンガポールチームとのファイナル、ともに3戦先取の計6戦全勝で優勝を決めることが出来ました。
一進一退の気の抜けないドッグファイトは本当に白熱したもので、今でもあの時の興奮、そして最後のフィニッシュラインを切った、優勝が決まった瞬間の歓びは忘れられません。
大学ヨット部を終えてからの1年弱、キールボート、そしてマッチレースの世界に来てみて、様々な人に出会い、様々な艇種に乗らせていただいて、本当にヨットの世界は奥が深いということを感じています。
日本では若いセーラーたちにとっては、インカレなどの国内の学生同士の戦いがメジャーですが、今大会に来ていた海外の選手達は自分の思うままに、自分の夢を追いかけて、世界狭しと国外の国際大会で活躍している選手ばかりでした。
特に地元シンガポール勢のヨットにかける強い想いには、同世代のセーラーとして見習うべき点や刺激を受けることばかりでした。
シンガポール国内には全部で4つの大学がありますが、ヨットが乗れる大学はそのうちの2校のみです。
小さな対抗戦などは年に数回あるそうですが、全ての学生が国外の大会を焦点にセーリングをしています。
470やLaser、49erなどに乗るセーラーは、ユース世代にもなるとナショナルチームのメンバーのみとなり、その他の選手はキールボートの世界へと戦う舞台を変えていき、そしてその多くがマッチレースを経験していくそうです。みんなマッチレースの世界の第1線、America’s CupやWMRT(World Match Racing Tour)、アジア大会などの舞台を目指してセーリングをしていて、今大会中にシンガポールの選手と交わした会話の節々で、そのセーリングに対する「本気さ」を感じ取ることができました。
日本ではあまり知られてませんが、世界にはユース世代の為のマッチレースの大会がたくさんあります。
今回僕らが出たのはアジアのユース大会ですが、ヨーロッパユースやオーストラリアユース、ユニバーシアードワールドやU25ワールドなど、マッチの世界に踏み込む少しの勇気と興味があれば、僕らにも世界を相手に戦うステージはたくさんあるのです。
同じ大学同士の仲間と戦うインカレは、大切な仲間や同期たちと1つの目標に励んでいく素晴らしいヨット競技です。しかし、今しか出来ないヨット、若い僕らだからこそ出来るヨットはそれだけではありません。
国を越えて、再会と再戦を誓い合える友をつくれ、そしてヨットを通して世界を知ることができる。
大学4年間で終えてしまうにはあまりに勿体ない世界は僕らの前に広がっています。
ディンギーからキールボートへ!若い世代の僕らで、一緒にヨット界を盛り上げていきましょう!!
最後に、今大会に参加するにあたり、多くの方々から多大な支援をしていただきました。
このような最高の舞台に立たせていただき、本当にありがとうございました。
左から、市川航平(早稲田大学)、中山遼平(東京大学)、荒川淳一(京都大学)、加藤文弥(早稲田大学)
レース海面は、マリーベイサンズホテルの目の前でした。
ルームメイトで仲良くなったシンガポールチームと
国境を越えて多くの友人ができた、素晴らしい大会でした。 |