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Race Schedule

第14回 アジアセーリング選手権
----------2010/3/22〜29
レポート/佐藤大介

2010年はアジア大会の年です。2006年の前回大会はカタール・ドーハで開催され今年は11月に中国・広州で開催されます。アジア大会に先立ちセーリング競技は広州の南東にある汕尾市にて、アジアセーリング選手権が開催されました。

 アジア大会では前回のドーハからマッチレースが採用されており、今回が日本からの初参加になります。JSAFが「勝ちにいくアジア大会」を目標に掲げるアジア大会の前哨戦であるこの大会は2009年の全日本マッチレース選手権で優勝した実績から『Team Albatross』がJYMAからの推薦を受け、中村匠(Helm)、笹木哲也(Head Sail)、伊藝徳雄(Bow)、佐藤大介(Main Sail)が出場し、金メダルを獲得することができました。

 汕尾は広州・白雲国際空港からバスで4時間、中国のセーリングトレーニングセンターが会場になります。公安警察のセキュリティゲートに守られたセンター内の施設にはホテル、レストラン、ディンギーヤード、ポンツーンが設けられています。
広州は中国国内でも非常大きな都市ではありますが、4時間も移動すると交通インフラの整備が十分行き届いていない辺境の地でした。汕尾市の市街地ですら車で30〜40分かかります。
 また、セーリングセンターというものの現時点ではアジア大会に向けたリニューアルの段階であり会場の至るところで工事作業が行われている状況です。11月の本大会ではどのような完成型となっているのでしょうか。

 22日から現地入りした我々ですが、Briefingで初めてレースが26日からの開催であることを知らされました。マッチレース種目は運営の中心がISAFから派遣された欧米人アンパイアが中心となって行われておりましたが、彼らから現地の中国人スタッフへの教育から必要なようで大会までに運営の練習を行いたいとのことでした。旗揚げの練習から始める姿があり、海上で英語の通訳がいないとコミュニケーションができない中国人レースコミッティもいてレガッタを多く経験している我々にとって少し心配にさせる部分がありました。これもセーリングが発展途上であるアジア地域の一面なのでしょう。
 しかしながら競技が始まるとそういった懸念はまったく感じられず、英語が通じない関係者には通訳を用意するなどして多くのスタッフを巻き込みストレスの少ないレガッタになったと思います。

 今回マッチレースに参加した国は中国、タイ、パキスタン、インド、シンガポール、韓国、そして日本の7国で、ダブルラウンドロビンの上位4位がセミファイルでベストオブ5を行った後に、ファイナルでベストオブ5を対戦するフォーマットです。
 上記各国とのすべての対戦レポートは割愛いたしますがセミファイナルに残った中国、インド、シンガポールに関して触れたいと思います。中国代表は大会前のアンパイアによる講習でエントリーの仕方を熱心に聞く姿が見受けられたようにマッチレースの経験は少いないようでした。しかしセミファイナルで我々と対戦した際にはマッチレースの経験と実力で我々が圧倒したものの、軽風コンディションで我々に対しセーリングで追いつく状況もあり決して気を抜けない相手でした。
 セミファイナルのもう一つの対戦のインドとシンガポールは一つのマッチでYフラッグが20回以上も揚げられる非常に拮抗した対戦になりました。
インド代表はアジアパシフィックマッチにも参加したことのあるM. Ramchandran選手がヘルムスマンを務め、彼の多くのインターナショナルマッチの経験を生かした接戦の戦い方は非常に見ごたえのあるものでした。
対するシンガポール代表は全員が20歳前後の若いセーラー達で、プラクティスレースで対戦した印象では今回の一番のライバルになるだろうという実力を感じました。昨今シンガポールはセーリングを国技と定めセーリングに対する投資が非常に大きくなってきています。マッチレースも同様すべてのセーリング種目にオーストラリアやニュージーランドからコーチが就いておりセーリングに対する国を挙げての意気込みはレガッタで随一でした。またどの競技も非常に若いセーラーが参加していることからますます今後の成長が注目され、アジアでのシンガポールの台頭は日本のセーリング界にとって影響力の強いものになると思います。
結果タイブレイクまでもつれ込んだインドとの接戦を制したシンガポールが我々の決勝の相手となります。決勝の結果は我々が3戦全勝で優勝ことができました。シンガポールの実力は我々のミスを許さず決して気を抜けないレースをさせてくれました。また今回使用した『J/80』はガンポールのジェネカーを搭載した非常にスタビリティーの強い船で、ジェネカーボートの経験が多かったことも我々のアドバンテージになっていたでしょう。

このアジア選手権は、マッチレーシングチームやスポンサードチームとして個々のチームでインターナショナルマッチレースに参加するのではなく、“日本代表(Team JAPAN)”としての参加であったことが特徴でした。イベントグレードがありスキッパーにランキングポイントが付くことは無く、また賞金を得られるわけでもありません。表彰台に上がった際に所属チーム名やスポンサー名が発表されるわけでなくて、日本代表として表彰台に立つことになります。スポンサードチームとして活動する方に敢えて参加するにあたってのマイナスの面を言えば、先にもあるようにスポンサーの広告を出しにくいものであると思います。それはオリンピックの商業的イベントにさせない方針があるからかもしれませんが。マッチレースはディンギー種目とは異なり自艇の使用ができないことから船やセールにスポンサーロゴを貼ることもできません。余談ですが実際我々はスポンサーのウェアでレースをしましたが表彰台には『Team JAPAN』のウェアを借りて上がることになりました。

今回、皆様の期待を受け結果として金メダルを獲得することができ、現在アジアにおける日本のマッチレースは非常に高いレベルにあることを証明できたレガッタであったと自負しております。しかし先にも述べたとおり我々以外の国はセーリング競技の発展に対して非常に強い意気込みが感じられ、その成長度は過去の日本のマッチレース界の成長よりもスピードを感じるものでした。11月の本大会はこのアジアセーリング選手権よりももっとconpetitiveな大会になることは間違いないでしょう。
日本代表としての参加はディンギーやキールボートなどの艇種の異なる選手や、OPの代表の子どもたちといった世代を超えて選手たちが日本代表という一つのチームとして一丸となり交流できたことが非常に貴重で意義のある大会であったと思います。JYMAをはじめJSAF、オリンピック特別委員会の皆様のご支援とご尽力によりこのような素晴らしい経験を与えてくださったこと深くお礼申しあげます。また大会中、個人的にたくさんの応援の声をくれた皆様、本当にありがとうございました。
再び11月の本大会での“Team JAPAN”の活躍を期待しましょう。


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